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添乗員日記 ツアコン奮闘記Ⅱ パリシャンゼリゼ そぞろ歩き

ツアーコンダクター体験談

派遣添乗員20年の私が体験した、裏話、苦労話、他愛もないことから、とんでもないことまで、、ツアーに起こるハプニングなど綴っています!

シャンゼリゼ通りをそぞろ歩き

添乗員の基本的な役割は、予定されているツアー内容を実施することだが、

大勢の中の一人ひとりの希望をかなえて、より満足いただくのも大切な役割です。

特に派遣添乗員は、お客様とは初対面が多い!

その分、ツアー中に人と関わり、要望を引き出して、実現する… ということ大事になります。

こうして、より満足いただけるように努力をしていた私ではあるのですが…

パリの添乗の時は今思い出しても、実現するのが大変でありました…

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なぜか予定にない「自由行動時間」

添乗の際は、出発の数日前に、主催している旅行会社に行き、

旅行内容やお客様について打ち合わせをします。

詳しい内容はその時ということが多いです。

某旅行会社のフランス7日間の旅行の添乗をした時のこと。

お客様は、地域の「海外旅行会」という、今では珍しい団体旅行でした。

人数は20名、年齢は半分が60代の夫婦で、

もう半分が、かなり年配なおじいちゃんおばあちゃんの仲間たち…

団体の営業担当者(お客様と直接話をしている)の説明では、

「年齢層も高めなので、3日目の午後はホテルで休めるように、

自由時間を入れてある。自由時間のことも、旅行会の会長さんともばっちり内容は確認している」。

とのことでした。

地元の旅行会なので、お客様同士も顔見知りが多く、

若干年配の方が多いのは気なったものの、

「寄せ集めのツアーよりは、まとまりがよさそうだな…」

というのが私の実感でした。

 

出発当日を迎え、集合場所に行くと…

みんな和気あいあい!

思ったとおりのよい雰囲気で一安心しました。

 

初日は空港からのバスも

成田空港からの13時間の空の旅もとても順調。

無事にパリへ到着しました。

パリ到着後も、初日はゆっくり。

「今回は本当になんの心配もないツアーになりそうだ…」

とほっとしていました。

 

ところが、、

初日の夕食、、

円卓で和やかに話が進む中、

同テーブルになった会長さん(60代渋いお父さん)と

副会長さん(長老風の優しそうな男性)に、

「3日目の自由時間は皆さんゆっくりされるんですよね」

と聞くと、、

「・・・自由時間・・・?・・・そんなのは聞いていない・・・」

あわててお客様の旅のしおりを見させてもらうと、、

3日目の午後は、【市内観光】、【夕食】となっている!!

さらに聞くと、

当初は、自由時間だったが、

何をやってよいかわからない人もいるだろう、

と、会長、副会長の二人で、某担当者にお願いし、

【市内観光】をあとから入れてもらった。

ということらしい…

話がちがう…

「困ったことになった…」

とは思ったものの、この日はやりようがないので、

とりあえず翌日に何とか考えることにして、それぞれ部屋へ…

 

部屋に帰った私はすぐに日本の某担当者へ国際電話で状況を説明し

指示を仰ぐことに、、、

ところが、、、

担当者は、「最終的には自由時間で話した」の一点張り。

「午後に観光を入れる金額的余裕もないので、オプショナルツアー(現地で予定をたて、追加代金をいただくこと)で対応してほしい」との指示でした。

いま思うと、とんでもない担当者だったな~・・・と感じるが…

当時は、大事な仕事元の担当者、いわれるままに、会長へ相談することにしました。

「そういうことで、お願いします!」

翌日朝食後、、、みんなを集めて、会長から皆さんへお話ししてもらうと…

始めは、、、「それなら安全に追加代金を払って観光しよう」

「そうだそうだ」となっていたのですが、、、

もっとも年配のおばあちゃん(田村さん)が、、、

「せっかく自由な時間があるなら、シャンゼリーゼをみんなで歩きてーなぁ」

と一言…

風向きとは恐ろしいもので、、、こんどは、、、

「そうだそうだ、、みんなで歩けばこわくねぇ」

「そうだそうだ…」

いつの間にか、シャンゼリゼをみんなで歩くことが総意となり…

ついには会長から、

「そういうことで、○○(私)さん!お願いします!!」の一言、、

 

海外旅行初めての年配の日本人20名が

ぞろぞろとシャンゼリゼ通りをそぞろ歩き…

想像しただけでも恐ろしい、、、

最長老風の副会長さんにも

「もう二度とない機会だから、みんなにそういう体験をさせてやりたい!

添乗員さん、このとおり、お願いします!」

と頭を下げられ、

私も「これはやるしかない!!」

という気分にさせられてしまい、

「よーし、、なんとかやりましょう!!」

と返事をしてしまったのでした。

事前リハーサル

その日は、パリ郊外を観光する日だったので、

みんなで楽しく観光でしたが、、

私の頭の中は、終始明日の午後のことばかり…

 

なにせ、「やりましょう!」と言ったものの、

お客様のほとんどは人生初の海外旅行。

何をやるにも、「添乗員さーん」と声がかかる…。

そんな皆さんを安全に案内しなくてはいけない…

しかも、、

自由行動という事は、貸切バスが使えない、、

ホテル近くの駅から地下鉄で、凱旋門へ行かなくてはならない!

そして、あのオシャレな通りを、20人でぞろぞろと歩き…

また地下鉄に乗ってホテルへ帰ってくる…

「できるのか、そんなこと…(冷汗)」

 

あまりにも心配だった私は、夕食後に全員を集めて、

リハーサルを実施することを会長に提案し、

食事後にみんなをレストラン横の小部屋に集めました。

「地下鉄の乗り方」

「チケットの買い方」

「簡単なフランス語」

「コーヒーの飲み方」

など、、1時間以上の時間をかけ、

明日のシミュレーションを実施…

私の必至さが伝わったのか、

みんなとても真剣に

「メルシー~」「ぼんじゅーる⤴」など

何人かで声を出し合っているのを見て、

私は、強い使命感のようなものに襲われ、

なんとしても、迷子やケガ、スリなどなく、

良い思い出を作りたい!と決意するのでした!

いよいよ3日目の自由行動

その日の夜はなかなか寝付けず…

あっというまの朝を迎えることに…

パリ観光を楽しんでいる中、

ドライバーさんとガイドさんに、午後のことを伝えると、

海外では予定にない行程を案内してくれることはほぼないのですが、

「凱旋門」「シャンゼリゼ」の車窓見学をやってくれたのです!

これからいく通りを見て確認できたことが

ほんとに助かった…

「では参りましょう!!!」

ついに午前観光が終わり、、ロビーに全員集合。

みんな余裕のまったくない硬い表情に、カチカチの体、、

なんだか戦地にでも赴くような異様な空気の中、、

会長さんの

「では参りましょう!!!」という大きな声で

皆駅に向かって行進が始まりました。

ぎこちなさ100%で、販売機でチケットを購入し、

絶対に迷子にならないように、

みんなぎゅうぎゅうに集まり地下鉄に乗る日本人の姿は

周りから、さぞかし異様に見えたことでしょう…。

凱旋門の駅で地下鉄から降りるまでは、

みんなのこのカチカチ、ぎゅうぎゅうが続き、、、

やっと地下鉄の階段を上り、地上で出た瞬間…

目の前に現れた凱旋門に、みんなの「わぁーーー!」という歓声!
車窓から見たのとは迫力が違う!!

自分たちの足でここまで来た、という感動でしょうか、、

みんなの喜びあふれる表情に、

私も嬉しく、忘れられない感動でした!

凱旋門の展望台に全員で上がり、パリの市街地を眺め、

降りてきてシャンゼリゼを歩きだしたころには、

みんなの緊張もほどけ、、

なんと数人で「オーシャンゼリゼ」を歌い出す始末…

かなりはずかしかったのだが、、、、

内心ほっとしてもいたのでした。

「カフェでコーヒーを飲みたい!」

さて、あとは帰るだけ、、と思っていたその時、

また、あのおばあちゃん

「せっかくだからカフェでコーヒーを飲みたい」

前日の同様、、

「いいねいいね~」

「なんとかお願いします!」

そして私に、全員でカフェへ行きたいという無茶ぶりが…

こうなったらなんでもやってやる!!と

なかばやけで、思い切って、

有名店の「フーケ」で話しにいったところ、、

まさかの「OK!」

当然時間はかかったが、、、みんなで交代しながら…

1杯ずつ、カフェを味わうことを実現!

日本人が名店「フーケ」を占領している風景もまた、

異様だったと思います。

現地の方々はとても優しく、

ほほえましく、声をかけてくれたのが救いだったなぁ~!

会長さんも、出発時険しい顔で、

「絶対最初から最後まで、全員一緒に行動すること!!」

と言っていたのに、、、、

カフェの後は、1時間の自由時間を取りたいという始末、、

それぞれが、通りで買い物などを始めることに!

例のおばあちゃんは、数人で「ルイヴィトン本店」へ行き、

バッグをゲット…、、、おそるべし!おばあちゃんの行動力。

「一生の思い出になりました。ありがとう。」

帰りの地下鉄などは、もうみんな慣れてしまって、

普通に会話をしながら、なんなくホテルへ到着!

全員が大満足の様子で、それぞれの部屋へ帰っていったのでした!

会長、副会長、私の三人はそれを見届けたあと、

「ふぅ~~!!」

私もですが、責任あるお二人も、わたしと同じ心境だったようです。

おふたりから、

「みんなの一生の思い出になりました。無理を言ったが、本当にありがとう」

と、暖かい握手をしてもらい、

目頭が熱くなり、

実施して良かったと、心底思ったのを覚えてます。

 

その後も楽しい7日間を過ごし、日本へ。

日本の空港から地元へ帰るまでの間、バスの中は、

シャンゼリゼ散策(シャンブラ)の話で持ち切り…

私の経験の中で、

振り返ると最も印象的なツアーの一つとなったのでした!

ただ、行きの地下鉄でのあの緊張感と不安は、

一度だけでよいかな…!

パリそぞろ歩きの話は、こんなとこです。

 


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